巨大少年草紙余話(古羽 宗の工夫)

<1>

  此処は夜の駒布市立児童公園。日中は子供や老人、スポーツに勤しむ人々などでそこそこ賑わう公園であるが、流石に夜ともなると人も少なくなるようだ。そんな公園の一角・・・丁度広場になっている場所で古羽 宗(フルバネ シュウ)は、ウォーミングアップをしながら30分も前から呼び出した先輩を待っていた。因みに季節は6月下旬・・・まだ、夜は少々肌寒いというのに宗の服装は、ピッタリとした黒いタンクトップに黒いスパッツと言う軽装である。尤もこれからする事を考えれば無理も無い服装ではあるが・・・。
  丁度約束の時間3〜4分前に敬愛する先輩が歩いてくるのを認めると中性的で愛らしく整っている顔一杯に、喜びを浮かべ全力疾走で駆けより大声で呼んだ。
「先輩〜〜先輩〜〜せーんーぱーいー!」
  そのまさに熱烈歓迎と言うに相応しい歓迎を受けながらも、彼が唯一頭を撫でられる事を許している先輩・・・火貝 悠(ヒガイ ユウ)は冷静に言葉を返す。
「お・・・そんなに大声を出さないでも聞こえるよ・・・ところで、こんな時間にこんな場所に呼び出して何する気?」
  火貝の言葉は尤もなものであった。何しろ、時刻は午後8時、場所は復興して間もないビル街に程近い人気の無く、広大な敷地を持つ公園だったのだ。その疑問を受けて宗ははにかみ笑いを浮かべ、返答する。
「ヘヘヘ、ちょっと、トライアスロン用の競泳水着を改造してみたんですよ♪」
  背中にはスポーツバッグを自慢げに揺らしながら答えた後輩に、火貝は訝しげな視線を送りつつ適当に頷き、この危険なぐらい懐いている後輩が何を考えているのか予想がつかないため唸りながら疑問符を浮かべる。
「・・・?・・・前の奴にはなんか欠陥でもあったのか・・・・?」
「ふっーふっふっふっ〜、まぁ見てくださいよっ!(笑)」
  含み笑いを浮かべながら、背中のバッグを開けて、赤い、材質はゴムっぽい質感だが、青い稲妻のような線が腰と股間の一番下から中央に向けて走っているデザインの、ビキニタイプの水着を取り出し火貝に良く見えるように広げてみせる。ちなみに、水着の後ろの部分は青一色でプラスチックのような材質であったが、つやつやと輝き月光を反射していた。しかし、火貝が目に留めたのはそんな些細なデザインや材質の差ではない。
「・・・股間に・・・チャックとポケットがついてるようだが・・・」
  火貝が嫌な予感を感じつつも見たままに答える。確かに、水着の前面部分には、中身が入っていないにもかかわらず、かすかに膨らんでおり、同色の2cmほどのチャックとその下に深さ3cm程度のポケット・・・と言えるような物がついていた。火貝の言葉に、我が意を得たりとばかりに宗は深深と頷き説明を始める。
「そうなんですよ〜、実は先輩を乗せて巨大化したときタンクトップの紐が命綱じゃ心もとないでしょ? それに肩の上からじゃ見せられないアングルとか壊し方とかありますし、飛んだり跳ねたり出来ないし、やっぱり両手を思い切り使えないと迫力無いでしょっ!?」
  そんな事は無いと、火貝は言いかけるが期待にキラキラと瞳を輝かせる後輩の姿を見て説得は難しそうだと直感した。
「そ・・・あ・・・。まあ、一理あるね・・・。でも幾ら固定されててもあんまり激しく動かれると多分・・・ろくな事にならないと思うけど?(汗)」
  それでも諦めきれず火貝が否定要素を口にすると、宗は気取った仕草で指を左右に振り否定する。
「ちっちっち、俺が先輩を危険な目に合わせるわけ無いでしょ?実はこの水着・・・NAS○で開発された衝撃吸収素材で出来ていて、1mmの厚さで衝撃の99.99999998%を吸収するんですよ。実験では固い地面に之を敷いて、10mの高さから落とした生卵も罅一つ入らなかったんですよ!」
  逃げ場を奪われつつある火貝は「そんな、新素材どうやって手に入れた・・・」と言う至極真っ当な意見すら言わずに、往生際悪く苦言を呈した。
「・・・でも・・・宗って壊してる時・・・その・・・あれだ・・・矢鱈・・・その・・・興奮するよね?(滝汗)」
  火貝最後の抵抗に、宗は後光すら差しそうなぐらい爽やかで、疚しい事など一片足りとも無いという笑顔を浮かべ、火貝の反論を叩き潰す。
「安心してください!俺がおっきくなっても平気なようにポケットの位置を棒の根元から少し上ぐらいにしてますし、ポケット自体も二重構造でクッションになってるです!しかも、内部にしっかり隙間が出来るようになってます!さらに!!」
そ こでいったん言葉を区切ると水着を真横・・・1mほどに引き伸ばす。驚いた事に水着は易々という風情で横に引き伸ばされ、その際には余計な皺など1筋足りとも現れておらず、中央のポケットは引き伸ばされる前とほぼ同じ大きさであった・・・別段硬いものを入れているようにも思えないのだが・・・。
「見てください、この伸縮性を!之なら先輩に優しくフィットして俺が暴れるのを真近で見れますよっ!!」
  火貝は、「その労力どこか別のところに使えないの・・・?」と言う真っ当すぎる突っ込みを入れる勇気すらなく頷くと後輩へ了承の言葉を返した。
「・・・ふぅ・・・そこまで考えてるんならやめる気は無いんでしょ?」
  力の抜けた承認に、宗は本当に嬉しそうに頷いたのだった・・・。

<2>

  先輩の許可をを受けた宗は、その場でリュックから同じデザインの赤いタンクトップを出すと、下から着替え始める。男同士で人気の無い公園とは言え、大胆な性格である・・・大胆と言うより大雑把か・・・?
「じゃあ、着替えちゃいますね〜」
  そして1分後・・・新しいタンクトップと、水着姿に着替えると、火貝へ向かってウィンクする。
「じゃあ、おっきくなりますから、離れますね♪」
「あ・・・ああ」
  気の抜けた返事を返した火貝の視線は、これから自らの身を委ねるであろう、宗の股間しか移していない。その視線を感じ、宗は悪戯っぽい笑みを浮かべると、素早く火貝へと近寄り、耳元で囁く。
「・・・火貝先輩・・・そんなに熱く見つめられると・・・俺、起っちゃいますよ・・・?」
  宗の言葉に耳まで真っ赤に染めた火貝を見て、目を細めペロリと舌なめずりをすると首筋に軽くキスをしてから、火貝の文句が飛ぶ前に15mほど離れた地点に移動し、身体に力を込める。
「ふっ・・・!」
  その瞬間、宗の均整の取れた身体は爆発的に膨張し、あっという間・・・それこそ瞬きの一つの間に大抵のビルよりも巨大化する。そして火貝の近くまで歩くと、驚くほど柔軟に腰を曲げ火貝の両脇に両手をついて腕だけで体重を支え、ゆっくりと開脚し、静かに腰を地面へと下ろしたのだった。
「・・・パワーアップしてない?」
  火貝は半ば呆れながら眼前に広がる(と言うかソレしか見えない)後輩の美しく引き締まった太股と中性的な外観に不釣合いなほど発達した股間を見つつ呟くが、宗は気にせず話し掛ける。
「先輩〜、チャック開いて、水着ずり下げますんで自分で入ってもらえます?」
「あ・・・あぁ」
「あ、あと、俺のリュックサックを持ってきてくれませんか?中にコードレスのヘッドフォン付きマイクが二つあるはずなんですが・・・」
「あぁ?・・・あったよ」
  火貝はリュックを探ると小型のヘッドフォン付きマイクを取り出し、首をかしげた。
「しかし、こんなもん何に使うんだよ?」
「前は肩の横でしたから、会話に不自由しませんでしたけど今回は離れてるますから・・・その対策です♪」
  何故か、頭痛のする眉間を揉み解しながら宗の話の続きを促した。
「で・・・サイズが合わない気がするけど?」
「俺の指に片方乗せてください〜」
  太さ1m以上ある巨大な指に小さなヘッドフォンを乗せてもらってから、宗は「ふっ!」っと全身に力を入れる。
「ほぉ〜・・・大きくなったね・・・変な特殊能力ばっかり付くなぁ・・・(汗)」
「すごいでしょ♪、でも自分以外の生き物はダメみたいですけどね〜」
  この際、物理法則などは考える事を止めた火貝は大仰なため息をついて宗の股間へ歩み寄る。
「で・・・僕が其処には居るんだろ?」
「はいっ♪先輩もヘッドフォンつけてくださいね〜」
  実のところ、足を踏み出す勇気が要るのは火貝であった。幾ら安全と言われていても、宗の股間はビルを叩き壊し人を磨り潰した実績があるのだ、しかも真近で見ていたのは他ならぬ火貝自身である。しかし、何時までも硬直していてもしょうがないので、火貝は電源を入れたヘッドフォンを身に付けるとその直径2mほどの入り口に手をかけゆっくりと入っていった。
「お・・・おーい、そういえば、ここに入っていると何も見えないぞ?」
  中に入った火貝は、クッションの感触を確かめたり、その奥で息づく宗自身の逞しささえ感じる股間の脈動に頬を染めたり、今は軟らかくなっているが興奮すると冗談抜きでビルを粉砕するほど硬質になる部分に軽く蹴りを入れたりしていたが、チャックを閉められてから暫くして、その疑問を口にした。宗は火貝の疑問は言う前に判っていたのか即座に答える。
「あ、中に小さなチャックありますよね?それあけてください〜」
  その言葉に、宗からは見えないだろうが思わず頷くと、火貝は手探りでチャックを見つけると自分の顔辺りにあるジッパーを動く方向へと動かす。ジッパーの構造は縦60cm横40cm程度の長方形で、上、右、下と下ろすとクッションの無い縦30cm横40cm程度の窓?が開き、さらに左、上、と移動させると、開いた部分の生地がTバック本体に密着するようだ。さらに隣には、透明で穴が空いてるとも思えないのに空気を通すらしい(プラ製のようだが伸縮性に優れ、材質不明)部分が内蔵され、窓ガラスのようにチャックで開け閉め可能と言う、至れり尽せりな構造であった。
「おぉ〜・・・」
  窓?を開けた火貝の視界に飛び込んできたのは、美しく引き締まってるだけでは無く、実用にも優れた、体毛が殆ど無い宗の両太股と、それに続くすらりとした長い両足だった。感動したらしい火貝の反応に宗は嬉しそうに含み笑いを浮かべると火貝へとさらに機能の説明をする。
「フフフ・・・先輩〜、一応シートベルト閉めといてくださいよぉ〜?」
  宗の言葉を聞きながら、「そんなものまであるのか・・・」と呟くと、矢張り手探りで、胴部分と足部分にあったシートベルトを締める。ちなみに胴部分は6点で衝撃を吸収し、足部分はサンダルのように足にフィットする形であった。
「・・・よくもまぁ・・・作るもんだね・・・」
  火貝はその精巧に作成されたベルトの強度を確かめるように引っ張りながら言う。
「そりゃ、特注品ですから♪」
「・・・無駄な事を・・・(呆)」
  宗は、火貝の、呆れて脱力したような言葉には何も言わず、尋ねる。
「どうです?苦しかったり痛かったりしません??」
  気遣わしげな宗の言葉に、火貝は周囲の様子を触って確かめながら言った。
「あぁ・・・丁度いいね。・・・歩いたりすると判らないけど・・・」
  心配性・・・と言うか、当然な火貝の言葉を受けて、宗はゆっくり立ち上がり声をかける。
「じゃあ、ちょっとだけ動いてみますね〜。痛かったり苦しかったりしたら言ってください〜」
  その前につぶれるんじゃないかとか思いながらも火貝は了承を返したのだった・・・。
「最初はゆっくり動きますね〜」
  その宣言とともに宗は二歩ほど歩くといったん動きを止め、股間へ声をかける。
「どうです?」
「う〜、快適と言えば快適」
  実際火貝の身体を軟らかく抑えるクッションはまったく振動を伝えなかった。その火貝の返答に宗はさらに確認する。
「じゃあ、少し激しく動きますね」
  そう言うと、何も無い場所に軽く前蹴りを繰り出す。内部は多少揺れるがどうやら平気らしい。
「・・・平気みたいだね・・・」
  自分の発言が、墓穴を掘ってることを自覚しながらも、火貝はこれから始まる破壊に微かに興奮しかけている自分自身を自覚した。
「じゃあ・・・こんなのはどうですっ!!」
  どうやら、大丈夫らしいと感じた宗は、何も無い空間に中くらいの位置への蹴りから、回し蹴り、そこでいったん止めて軸足を変え、逆方向への回し蹴り、さらにその体勢から逆回し蹴りを放ち、最後は跳躍してかかと落としを決める。
「多少揺れるけど平気だね・・・」
  流石、NAS○の新素材・・・使い方が色々間違ってるかもしれないが高性能である。
「之だけ動いて平気なら、ビルとかもたくさん壊せますねっ♪」
  新素材の平和利用というのは遠い・・・火貝はそんなことを思いながら、ビル街へと家々を潰しながら歩く宗を止められずに居た・・・。

<3>

  ビル街へ到着した・・・と言うかビル街の中に駒布市立児童公園はあるのだが・・・宗は、ゆっくりと、100メートル程度のビルへ忍び寄り、左足を横殴りに叩きつけた。圧倒的な質量を誇る宗の左足は脆弱な人造物をなぎ倒し轟音と共に一瞬にしてガレキの山に変える。

『バギャッ!・・・ズゥーーン・・・』

「おっ!?いきなりやりすぎるなよっ??」
「あははっ、楽しいなぁやっぱりっ!」
  どうやら、火貝の言葉はさらりと流されたらしい。さらに、壊されたビルの跡地を左足で踏みつけ、右足で前方にある不幸な建造物たちをサッカーのシュートをするように蹴りつけ、意味の無いコンクリートの塊へと変えてしまう。さらにパンチで目に付く高層ビルをなぎ倒し、ビルを両手で掴んでバックドロップを決めたり、ベアハッグで抱き潰す。
「じゃ、大技行きますよ〜っ!」
  宣言と共にビルを引き抜きビルを逆さにして抱きしめ、跳躍し自分の体重ごと地面へと叩き付ける。

『ドギャッ!・・・ズゥーーン・・・』


  哀れなビルは少年の股間辺りで原型を止めないほど大破してしまった。
「お・・・い・・・、なんか・・・お前のおっきくなってないか?」
  衝撃こそ無いものの宗の股間は、残虐な破壊行為に勃起し始めていた。
「アハハハ、大丈夫ですよ俺のが最大に成っても先輩はつぶれませんから。それより・・・前と同じじゃつまらないですから今度は駅を壊しますね♪」
  にこやかな宣言と共に、周囲のビルを粉砕しつつ駅のほうへと歩いていった。
  厚采駅(あつさいえき)に着いた宗は駅の規模を確認するように周囲に目を配るとため息をついて先輩へと報告する。
「此処の駅ってあんまり大きくないんですね・・・ちょっと力入れたら壊れちゃいそうですよ」
さも残念そうに言う宗は、それでも楽しそうに駅をまたぐ形で一旦動きを止めると、股間に居るはずの先輩をガードするように巨大な掌で己の股間をガードして一気に駅へと向けて腰をおろした。

『ズンッ!ズゥゥンンン・・・・』

  腹の底に響くような地響きを立てて下ろされた少年の引き締まった臀部は逃げようと駅へと集合していた人々と、駅そのものを自動車に踏まれた蛙のように押し潰す。
「ハハ、先輩どうです?臨場感が違うでしょうっ!?」
「・・・どうでもいいが、やるなら言ってくれ・・・」
  勝ち誇ったような宗の言葉に落下の衝撃を受けて乗り物酔いのような状態になっている火貝は憮然と呟く。
「えへ、すいません。じゃあ・・・お詫びに良いもの見せてあげますよ♪」
  妖しげな笑いを浮かべた宗は今まさに発進しようとしていた電車を掴み持ち上げ、先頭車両を股間の近くに持っていき、残りの車両を肩にかける。
「今から、この電車でオナニーしま〜すっ♪」
  巨大化すると羞恥心も薄れるようだ。ともかく、火貝の言葉を聞く前に、膝立ちになりわざわざ赤黒く超がつくほど巨大で強靭そうな砲身を下向きに・・・股間に居る火貝へと見せつけるよに・・・その先頭車両に無理やり挿入しする。哀れな先頭車両は風船のように宗の逸物の形に膨れ上がるが気にせず上下に動かし始めた。

『シャシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ・・・・』

  徐々に荒くなっていく吐息と快楽に歪む可愛らしい顔が不釣合いなようなある意味似合っているような・・
  そんな倒錯を呼び起こす仕草と表情をほかでもない火貝へと見せつけながら最初からハイペースだった前後運動を絶頂に向けてさらに激しく動かそうとしたその時だった。

『バキッ!』

  あまりの握力に電車が耐え切れず内部が擦り切れてしまったのである。
「あ・・・ちょっと強すぎちゃいましたね〜・・・大丈夫です。電車は12両編成ですからっ!」
「そーゆー問題でもないよーなー・・・」
  宗はそのまま2両目に己の逸物を無理やり突き入れると、内部の乗客を磨り潰しながら上下に運動させた。
  ・・・結局、宗の超巨大な武器が特別濃厚な白濁を火山の噴火のように吹き上げたのは4両目であった。大量の精液は駅全体を覆い、濃厚な性臭を漂わせ地下鉄で逃げようとした人々を取り込み溺れさせる。
「はぁ〜・・・やっぱり狭いと気持ち良いですねっ♪」
  壊れてしまった電車を投げ捨てながら気持ちよさそうにため息をつき、先走りや汁で汚れてしまったビキニのフロント部分を指先で丁寧に拭いつつ、愛する先輩に感想を言う。
「あ〜・・・まぁそうだね・・・」
「あれ・・・なんか人が集まってますね。あれなんですか?」
  巨大な兵器をビキニパンツに押し込みながら宗が指差したのは駅の近くにある大き目の・・・縦30m横20m高さ10mぐらいの体育館のような建物だった。
「あぁ、あれは・・・確か、シェルターじゃなかったか?この頃なんか災害と言うか人災が多いし・・・つーか狭いぞっ!?」
  火貝の苦情をさらりと無視し、シェルターを眺めながら唸るとソレまで腰をおろしていた駅から立ち上がりシェルターに向かって歩き始める。
「シェルターぐらいで俺の攻撃を止められると思ってるなんて・・・許せませんよねっ!」
  同意を求めてるのか自分で確認してるだけなのか定かではないが兎に角、シェルターの前まで来た宗は先ほどの駅と同じように周囲を値踏みするように観察する。
「う〜ん・・・結構丈夫そうですね」
  そう言いつつ、シェルターの上に腰を下ろす。シェルターは宗の超重量にもよく耐えていたが徐々に足を浮かせて全体重を掛け始めると周囲に罅が入り始める。

『ピシ・・・パシ・・・』


  自分の体重では壊しきれないと悟ったのか、一度シェルターから降り両側に手をかけると力を入れ始める。
「よっ・・・くぅ・・・はっ・・・」
  その強大な力に頑強な・・・公式の発表では震度8でもびくともしないといわれている・・・シェルターは徐々に持ち上げられていく。
「くぅ・・・やっ!!」

『べきべき・・・スボッ!』

  大根でも引っこ抜くようにシェルターを引き上げた宗は誇らしげにそれを股間辺りに見せ付ける。
「どうでもいいがそんなもんどうするつもり?」
  にやりと笑いながら右手で建物を把握しながら左手を手刀の形にしてシェルターに突き刺した。

『ばきっ!!』

  丁度、くじ引きで使う箱のように中に手を入れるとごそごそ動かして引き抜くと、その巨大な掌には避難していた人々の一部が握られていた。
「ちょっとお腹すいちゃったんですよ、おやつぐらいにはなるかな」
「・・・え・・・?」
  発想が着いていかない火貝の言葉に、実際に見たほうが早いとばかりにスナック菓子でも食べるように掌の中に捕らえられた人々を巨大な口の中に放り込んだ。放り込んだ人間を、飴を嘗めるように分厚い舌で舐め回し、‘ぶちゅ‘と噛み潰して、飲みこんでしまう。口の中に広がる、傷を舐めたときのような味・・・その味ににっこり笑うともう一度、シェルターに手を突っ込む。
「おっ・・・おい?・・・美味いのか?」
「俺、肉はレアって決めてるんで♪」
  微妙にずれた回答をしながら再び、掌に捕らえられた人間を口に放り込み、噛み砕きながら手をシェルターに突き入れ、握りこぶしのまま股間の辺りに持っていく。
「でも、俺ばっかり楽しんでも、先輩退屈でしょうから・・・」
  そして、徐々に力を込めていく。少年と青年の間辺りの華奢とも言える筋肉質な腕に大蛇のような血管が浮かび上がり、拳から鮮血が滴り落ちる。
「とりあえず、握りつぶしてみましたっ♪」
「・・・うぅ〜・・・今日肉食べられないかも・・・見せるなよ、そんなものっ!」
  ゆっくりと開かれた掌の内部を目撃してしまった火貝は吐き気を堪えながら後輩を叱責する。
「・・・むぅ・・・・じゃ、この中の人全員食べちゃいますね」
  愛する先輩から叱責された宗はその恨みを晴らすかのように、手刀で開いた穴に形の良い唇を押し付けるとシェルターを逆さにして内部のモノを飲み込み始める。

『ザラザラ・・・ポキン・・・カリガリ・・・コリっ・・・ゴクン・・・プチッ』

  鳥の軟骨を噛み砕くような音が響き、何かがつぶれる音も聞こえ・・口を一杯にしながらもぐもぐと咀嚼する。火貝はしっかり反応して巨大な兵器になった宗の『男』を感じながら一刻も早くこのリアルな咀嚼音が鳴り止むのを待っていた・・・。
 漸く食べ終わったのか、口の周りについた被害者の鮮血を舌で舐め取りながら機嫌が良さそうに火貝へと尋ねる。
「先輩、次は何壊しましょうかっ♪」
  どうやら、火貝の受難はまだ終わらないようである。

End?